千葉県 大学生 Mさん(19歳・女性)の悲しい心霊体験
「死児之齢(しじのよわい)」と言う言葉をご存知ですか。
亡くなった子どもの歳を「生きていたら何歳だろう」と数えて嘆き悲しむ様が転じて、後悔してもしかたないことを思い悩むことをいうそうです。
あの時、私にもっと勇気があったら・・・誰かにそのことを相談できていたら・・・あれから7年経った今でも、私はまさしく「死児之齢(しじのよわい)」に苛まれています。
事件が起きたのは、私が小学6年生だった時のことです。
夏休み明けに学校に行くと、私の席の前、マサル君の机の上に、花瓶に入ったお花が飾られていました。
小学6年生でも、その意味は理解できました。
担任のS先生の話では、マサル君は昨日、夏休みの最終日の夜、自ら命を絶ったのだそうです。
私は特に彼と仲が良かったわけではありませんでしたが、それでもクラスメイトとの突然の離別にショックを受け、涙が止まりませんでした。
一方、教壇に立ち、命の大切さについて切々と語るS先生の言葉は、まったく心に響きませんでした。
その理由は、マサル君は一部のクラスメイトからいじめにあっていて、そのことを連絡ノートでS先生に相談していたのですが、まったく取り合ってもらえていないことを、私を含め、クラスメイト全員が知っていたからです。
そう言うことは自分で解決するべきなのか?
先生に相談しても、解決してくれないものなのか?
私は常々疑問に思っていましたが、当時の私にはどうすることもできませんでした。
翌日、ショックを抱えたまま学校に行くと、マサル君の机にあったお花が、教壇の上に置いてありました。
「先生が花瓶の水を換えて、そのままになってるのかな?」
その後、続々とクラスメイトが、一様に暗い表情で教室に入ってきます。
それぞれが教壇の上に置かれたお花を一瞥するものの、特に反応することもなく、それぞれの席に着いていきました。
チャイムが鳴って、S先生が教室に入った瞬間、ギョッとした表情を浮かべ、私たちに問いただしました。
「これ、誰が置いたの?」
明らかに怒りの表情を浮かべたS先生の問いに、答える生徒はいません。
教室内はしばらく沈黙に包まれましたが、S先生は剛を煮やし、荒々しく引っ掴んだ花瓶をマサル君の机の上に置くと、機械的にプリントを配り始めました。
その日もクラスの中は1日中、重苦しい雰囲気に包まれていました。
翌日も重たい気持ちを引きずりながら学校に行くと、また花瓶とお花が、教壇の上に置かれていました。
昨日のS先生の態度を思い出し、クラスメイトの何人かで、お花をマサル君の机に戻すべきか、それともそのままにしておくべきか討論しましたが、結局答えが出ないまま、昨日同様、怒気をはらんだS先生の犯人探しの後、お花はマサル君の机の上に戻されました。
翌日、嫌な予感の通り、やはり花瓶とお花は、教壇の上に置かれていました。
それなのに、S先生はもう諦めたのか、黙ってお花をマサル君の机の上に置くと、何事もなかったかのように朝の連絡事項を伝え始めました。
その日の最後の授業の後、私はS先生から、帰る前に職員室に来るようにと言われました。
恐る恐る職員室の中に入り、S先生の前に向かうと、パソコンの画面を見せられました。
そこにはまだ誰もいない、朝の教室の様子が映し出されています。
その映像を見た時、S先生が教室の隅に隠しカメラを設置していたのだと理解しました。
しばらくするとそこに、朝一番に教室に入る、私の姿が映し出されました。
すると私は、自分の席にランドセルを置いてからマサル君の席に移動し、花瓶とお花を手に取ると、教室の前に移動して、当たり前のように教壇に置いたのです。
「Mさん。これは一体どう言うこと?」
S先生に問い正されても、答えが出てきません。だって、そんなことをした記憶が一切ないのです。
私とS先生の周りには、校長先生を含む何人かの先生が、事の顛末を知ろうと集まっていました。
すると私は、突然自分の意思に反して、先生の机の鍵のかかった引き出しを片手で引きちぎるように破壊しながら開け、そこから1冊のノートを取り出し、机の上に投げつけて、こう叫んだのです。
「ボク、先生ニ、助ケテ、助ケテッテ言ッタノニ、ドウシテ何モ、シテクレナカッタノ!」
S先生のことを怒りに満ち溢れた目で睨む自分の恐ろしい形相が、黒くなったパソコンの画面に反射して映っていましたが、そこに重なって見えたのは、間違いなくマサル君の姿でした。
傍にいた校長先生がそのノートを手に取り、しばらく内容を確認してから、「S先生、後で校長室に来てください」と言い残し、ノートを持ってその場を後にしました。
その後、学校内でS先生の姿を見ることはありませんでした。
やはりS先生は、自分のクラス内でいじめがあったことを隠蔽しようとしていたようです。
さらに、S先生の様々な不誠実な対応が明るみに出て、ついには警察が動いたことで教育委員会まで話が進み、マサル君に対するいじめは事実として認定され、加害者側が謝罪する事態に発展しました。
私は今、小学校の教師になるために、頑張って勉強しています。
マサル君のような子はもちろん、私のように後悔を胸に生きる人を、これ以上絶対に出したくないのです。