これは、神奈川県に住む10代の学生、Oさん(女性)の恐怖体験談です。
ある蒸し暑い夏の日のことでした。
その日は部活ですっかり遅くなり、最寄駅に着いた頃には、あたりはすっかり暗くなっていました。
吹き出る汗を手で拭いながら家路を急いでいると、防犯灯の根元の暗がりの中に、何かの塊があるのが見えました。
最初は大きな犬が座っているのかと思ったのですが、近付いて見るとそれは、防犯灯の柱を抱きかかえ、
苦しそうにうずくまる、こげ茶色の着物を着たお婆さんでした。
「熱中症かも?」
私はすぐにお婆さんの元に駆け寄り、傍にしゃがんで声をかけようとしたその時、パシッという大きな音がして、お婆さんの背中が着物ごとパックリ裂け、
まるでセミが羽化する時のように、お婆さんの中から、透き通るような肌をした裸の女性が出てきました。
全身がヌルヌルとした粘液に包まれ、仄白く光るその女性は、その場でゆっくり立ち上がると、
「ふうっ」と一回深呼吸をしてからおもむろに歩き出し、裸のまま路地の暗闇に消えていきました。
私の足元には、まるで抜け殻のように、籠目模様のこげ茶色の着物が落ちていました。