これは、埼玉県に住む20代の女子大学生、Sさんの恐怖体験談です。
その日、私は高校の同級生のYちゃんと、久しぶりにお台場に遊びに行く約束をしていました。
ところが、その当日は台風が接近中で、あいにくの空模様でした。
それでも、Yちゃんとは久しぶりの約束だったので、二人で強風に吹き飛ばされそうになりながら、駅からショッピングモールを目指して歩いていました。
すると、私たちの前に、両手で頭を押さえて、強風に煽られながらくにゃくにゃと歩く、サラリーマン風のおじさんを発見しました。
Yちゃんは悪戯っぽく
「あのおじさん、絶対ヅラだよ!普通、風で頭なんか押さえないもん!」
といって嗤いながら、おじさんの動きに釘付けになっていました。
私はそのおじさんのくにゃくにゃとした動きがなんとも滑稽だったので、すかさず持っていたスマホで隠し撮りを始めました。
心の中で私は(お願いだからヅラ、飛んで!)と祈りながら撮影を続けていると、私の意に反して、風が止んでしまいました。
その時、おじさんは安心したのか、頭から手を離したのも束の間、またすぐに突風が吹いたその瞬間、おじさんの頭が首からもげて吹き飛ばされ、まるでビーチボールのように、バウンドしながら転がっていったのです。
強風に煽られて転がっていく自分の頭を、必死に追いかけて行くおじさんを、私たちはただ茫然と見守っていました。
その後、スマホの動画を見返しても、映っていたのは閑散としたタイル張りの広場と観覧車だけで、おじさんの姿は全く映っていませんでした。
私はその時、あまり人の不幸を期待するものではないな、と思いました。