下心

下心

これは、群馬県に住む20代の大学生、Kさん(男性)の恐怖体験談です。

夏休みのある日、サークルの友人を誘って、ドライブがてら地元の心霊スポットと噂されている廃病院に、肝試しに行きました。

私とサークルの友人Mが誘ったのは、同じサークルのAさんとBさんの女の子2人。

要するに、肝試しと称して、私とMのそれぞれの意中の女の子と、デートがしたかったんです。

目的地に到着して、車を止めて藪の中をかき分けて行くと、突然視界が開け、いかにもといった佇まいの廃墟が目の前にそびえていました。

あえて2本しか持ってこなかったライトを、私とMがそれぞれ持って入り口に立つと、Mはまんまと意中のBさんの手を握って、さっさと中に入っていきました。

そこで私も、思い切ってAさんの手をぎゅっと掴むと、抵抗される訳でもなく、すんなりと受け入れてくれた感じがして、舞い上がるような気持ちになりました。

入り口から一歩入ると、建物の中は漆黒の闇が広がり、ライトの灯りもほんのちょっと先で暗闇に吸い取られるように、弱々しく消えて無くなるほどです。

私は何度かAさんの手を握り直し、ゆっくりと先へ進むと、壊れて半分ぶら下がったドアの向こうからライトの灯りが伸び、先に入ったMとBさんが出て来ると、私たちの方にライトを向けて、こう言いました。

「お前、それ、だれ?」

そう言われて振り返ると、そこにいたのはAさんではなく、ボロボロの服を身に纏った、全く知らない女でした。

私はその女と繋いでいる手を慌てて振り解いて、全速力で建物の外に逃げました。

皆で車に戻ると、一人で放って置かれたAさんが、カンカンに怒りながら待っていました。

Aさんへの説明は後回しにして、急いで車を発進させ、廃病院の方を振り返ってみると、さっきまで1階にいたはずのボロボロ女が、屋上から私たちを見下ろしていました。

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