千葉県 職業不詳 Tさん(50代・女性)の意味が分かると怖い話
ある日の午後、近所のスーパーに買物に行った帰りに、通り道にある公園で一休みしました。
買い物袋にはいくつか冷凍食品が入っていたので、そんなに長居するつもりもなかったのですが、ここ数年続く悩み事があり、すぐに家に帰る気になれなかったのです。
しばらくベンチに座っていると、4、5歳と思われる、真っ白なワンピースを着た、可愛らしい女の子が近付いてきました。
しばし遠目でこちらを伺っていたその子は、やおら私の方に駆け寄ってくると、買い物袋から覗いている長ネギを指さしてこう言いました。
「おばちゃん。コレ、なぁに?」
屈託なく聞いてきた少女に、少しドギマギしながら答えました。
「コレはね、おネギよ」
「ほっとくとどうなるの?」
「そうねぇ、腐って食べられなくなっちゃうかもね」
すると少女はニッコリと微笑み、2、3歩後退りしてから踵を返し、公園の奥へと走って行きました。
「可愛いけど、変わった子だな」
その時私はその少女に、そんな印象を受けました。
その後すぐに重い腰を上げ、家に帰って買ってきたものを順番に冷蔵庫に入れようとした時です。
長ネギが3本まとめて、真っ黒に変色して腐っていました。
「選んだ時はそんなことなかったし、長時間暑い所にいた訳でもないのに、変ねぇ。明日スーパーで交換してもらおうかな?」
その時はそんなふうに考えていました。
翌日、長ネギのことはもう諦め、愛犬を散歩させるために、あの公園に行きました。
昨日と同じベンチに座って休んでいると、またあの少女が、昨日と同じ出で立ちで私の眼の前まで走ってきてこう言いました。
「おばちゃん。コレ、なぁに?」
指さした先は、ベンチの肘掛けにリードを繋いだ、私の愛犬でした。
(「コレ」はないでしょう)
そう思いながらも、私は少女に答えました。
「この子はね、マロンっていうの。よろしくね」
すると少女が昨日と同じように訊いてきました。
「ほっとくとどうなるの?」
「この子はおばさんの大事な子だから、ほっとくことはないのよ。だってほっといたらきっと、死んじゃうもの」
すると少女はニッコリと微笑み、2、3歩後退りしてから踵を返し、公園の奥へと走って行きました。
その日の夜、元気だったマロンが突然体調を崩し、深夜でも救急で診察してくれる動物病院に連れて行ったのですが、そのまま息を引き取りました。
悲しみに暮れる中、あの公園での少女とのやり取りが、妙に胸に引っかかり、私はある恐ろしい計画を考えるに至りました。
私の父は数年前から認知症を患い、特に最近では自分で歩くことはおろか、日々の生活はすべて誰かの介護がないとできない状態で、私はそのことで大変悩んでいました。
翌日、私はあの少女に会うために、父を車椅子に乗せ、公園へと向かいました。
案の定、あの少女が駆け寄ってきて、父を指さして言いました。
「おばちゃん。コレ、なぁに? ほっとくとどうなるの?」